「華氏119」

 11月 10日TOHOシネマズ福津にてマイケル・ムーア監督の「華氏119」を観ました。
 この監督の作品は「シッコ」「ボウリング・フォー・コロンバイン」を観たことがあります。
 アメリカの今、を非常にどぎつくセンセーショナルに表現したものというのが第一印象です。
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華氏というのは温度の単位のことで日本では摂氏で表現するのでなじみがありませんが、レイ・ブラッドベリの小説「華氏451」(映画にもなっています)のタイトルにも使われています。
華氏451とは紙が燃え始める温度です。
 
 近未来、世界は活字の存在を許さない世界となっています。
(まぁそれでどうやって社会が成り立っているのだ?というツッコミもありますが、SFのこういったシチュエーションは、テーマとしているものが別にあるので、そこは問うものではありません)
 
 俗に言う焚書というもので映画ではファイヤマンという書物を探し出して燃やしてしまう職業が存在します。
 主人公の男はそのファイアマンなのですが、あるきっかけでつい本を手にとって読んでしまい、その魅力にとりつかれ、政府から追われる身となってしまうというストーリーです。

 このレイ・ブラッドベリの小説のタイトルを拝借して作ったのが「華氏911」でした。911という数字は勿論アメリカ同時多発テロの日9月11日を指し、当時の米国大統領の指示のもと中東との戦争へ走る米国の姿をドキュメントしたもので、当時の共和党への批判を伴っています。

 そして本作「華氏119」なのですが2016年の大統領選挙11月9日からタイトルはつけられています。

 オープニングは喜劇じみています。
ほぼ全米かと錯覚するほどの圧倒的支持を見せつけるヒラリー・クリントン陣営の賑やかさ。勝敗はふたを開けるまでも無く初の女性大統領の誕生かと華やぐ民衆・・・。
一方のお通夜のようなしんとしたトランプ陣営。
ところが開票が進むにつれて状況は一変していきます。 
 深夜の2時を過ぎた頃には、熱狂も冷め、お通夜と化していたのはヒラリー陣営でした。
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 よく言われるように、トランプの勝因の一つに米国中央に広がるラスト・ベルトとよばれるかつては栄え、今は廃墟に近い寂れた地域にすむ人々の支持を得た点があります。
 かつては自動車をはじめとする産業が盛んで、多くの移民を受け入れていた米国でしたが、日本をはじめとするアジアの工業力の向上、安い労働力を求める企業の海外移転によるドーナツ化現象等によりラスト(RUST:錆)ベルトと呼ばれるまでに零落しています。
 そしてまた多くの移民を受け入れてきたことで、もはやマイノリティではなくなってきた有色人種に、白人達の危機感もあったのでしょう、
その危機感にトランプは目をつけました。
(又は手をさしのべたと言う表現でも良いのかもしれませんが)

 選挙戦から米国のメディアのほとんどはヒラリーを支持、音楽、映画界のセレブ達もヒラリー支持をアピールしてきました。
トランプ自身の問題発言もそれに輪を掛けています。
 結局ヒラリーは敗れてしまったのは、大統領選挙特有の仕組もあったのかもしれませんが、米国民衆の今までの政治家達への失望もあったのだと思います。
 共和党であれ民主党であれ、結局は大企業や金持ち優遇とする政策に一般市民は限界を感じていたのかもしれません。
 そこに現れたトランプはこれまでの政治家と異なり出自は実業家でした。

 監督マイケル・ムーアは民主党支持だったかと思うのですが、この映画ではその党への絶望が垣間見えます。
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 この映画の中盤にミシガン州のフリントという地区での問題がクローズアップされます。新たに設置した水道管に鉛が混入しそのことで健康被害が発生、州知事(共和党)の対応のおくれに憤るマイケル・ムーアはこれまでのように突撃取材を試みますが、知事は不在。仕方なく給水車を使って州知事邸に放水するのですが、私はこの行動には疑問を持ちました。

 昔(バブルの頃だったか)、米国の下院議員だったかがTVカメラの前で日本製品をハンマーで壊して快哉叫んでいたのを覚えています。それを見て私はなんて大人げない国だろうと思いました。それは何も日本製だから、ということでは無く、そういうことで鬱憤を晴らそうとする事がみっともないと思ったからです。
大人なら、ましてや議員なら、言論・スピーチで戦うべきと今でも思います。 悔しい、憎らしいからものにあたって快哉を叫ぶとは
パフォーマンスなのかもしれませんが、中東その他アジア諸国で反米感情で大統領を模した人形や国旗を燃やしているのと大差ありません。

 そのことと今回のマイケル・ムーア監督の放水がダブってみえて、それって本当に効果があるのだろうか?と思うのです。

 その後その街にオバマ大統領がやってきます。(このトラブルはオバマ大統領の任期中におこったもの)
 カメラは彼の姿を見て歓声をあげるフリントの皆の顔をクローズアップします。(彼なら何とかしてくれるという希望に満ちた表情で)
 ですがその期待は無残に打ち砕かれ、マイクに向けられた言葉は「私達の大統領では無くなった」というものでした。
そして続けざまにおこるその街の空き地を利用した軍事訓練。そのことを知らない住人は驚嘆します。怪我人は出なかったようですが、このことで民衆は、”報復”と感じてしまいます。政府に抗議した事への。
(ある夜突然始められた軍事訓練は事前に通知されていたのかもしれませんが、多くの住人がそのことを知らなかったようです)


 そしてまたやむことの無い学校内での銃乱射事件に学生達は声を上げます。
 古い政治に憤る市民は議員として立候補します。ですが民主党の幹部は波風を立てまいと候補への援助をやんわりと拒絶します。

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 映画の後半はヒトラーの演説をトランプと重ね合わせています。
たしかにヒトラーもそうだったのかもしれません。困窮した市民を味方につける、という点では・・・・。







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